サービスが提供する価値を上げていくには、価値を受け取る相手であるユーザーを知ることが重要です。WEB上でユーザーを知る方法としては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
ビジネスの価値、ユーザーにとっての良い体験、というテーマの中では多角的な観点での検討が必要ですが、ここでは、WEBの世界でユーザーの体験性を高めてユーザーを知る方法の一例を見てみましょう。
人と会話するような感覚のチャットボット(Chatbot)

チャットボット(Chatbot)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
目にする機会の多いチャットボットの代表例としては、スマートフォンの音声検索アプリや、スマートスピーカーなどが挙げられます。
チャットボットは、ユーザーからの問いかけに応答し、要求に従ってアクションを行います。まさに「会話」を体験の中心としたサービスの提供といえます。
大手コミュニケーションアプリや自社アプリでも、チャットボットを利用して、サービスに対する体験そのものを大きく変えようとしている企業も出てきており、本格的なサービス普及が始まろうとしています。
チャットボットを使った活用例
- コミュニケーションアプリのサービス例
- メッセージ画面上でレストランの予約・決済までを完結させるサービス
- 衣料品販売メーカーのサービス例
- おすすめ検索、在庫確認、購入、お問い合わせまでを行えるサービス
- 宅配便業者のサービス例
- コミュニケーションアプリと連携して、事前にお届け日をお知らせするサービス
これらの取り組みは、すでにWEB上で提供しているサービスをより体験性を高めた状態で提供することや、実店舗で行っているような対面でのコミュニケーションをWEBの世界にも取り入れることで、WEBとリアル、オンラインとオフラインのシームレスな新しい体験を生み出すことを目指しています。
さらにこのチャットボットの仕組みで注目すべき点は、新しい体験を生み出すことのほかに、ユーザーからの直接のフィードバックが情報として蓄積され、それを次の戦略へと活かすことができる、非常に重要な情報資産となり得る点です。
ユーザー体験を中心にしたUXの観点でも、ユーザーの反応を示す情報をどれだけ集めることができるかが、ユーザーを知るためのカギとなります。直接ユーザーと会話し、フィードバックを集積できるチャットボットは、UX観点でも今後普及が進んでいくソリューションであると考えられます。
おすすめ提案を体験できる診断コンテンツ
実店舗で商品やサービスを販売していて、対面で直接接客を行うような場面では、顧客と対話しながら、より顧客にあった商品を提案することができます。様々な情報にさらされ、常に選択・判断を行っているユーザーにとって、おすすめ提案を受けることは満足度の向上にもつながります。
診断コンテンツは、簡潔なやりとりとユーザーによる能動的なアクションで、よりユーザーの嗜好に合ったものを提案できる、という大きなメリットがあります。
診断結果により購買意欲が高まったり、SNSでのシェアにつながったり、サービスとしてのよりよい体験を提供する方法としても活用できます。
また、診断コンテンツは、さまざまな選択肢を通してユーザーの行動や思考を知るひとつの方法だと考えることもできます。得た情報を元に、自社サービスを利用するユーザー像を、より明確にしていくことにもつながっていきます。

百貨店のコンシェルジュのように、単一店舗や単一ブランド内での提案ではなく、百貨店全体を見渡した上での提案を行うことで、百貨店に来店するユーザーの体験をより価値あるものとしている例もあります。
自社サービスに関連するユーザー体験とは何か、ユーザーは何を求めているのかを知る中で、サービスをより価値ある体験にするためのタッチポイント(接点)が見つかるかもしれません。
顧客体験としてのリードナーチャリング
ビジネスにおいて、マーケティングの考え方は必須要素です。端的にいうと、マーケティングとは、"顧客に買ってもらう仕組みを作ること" 、"よりスムーズに、強制することなく、購入へと至る仕組みを作っていくこと" を指します。
中でも、顧客が購入に至るまでのプロセスを明らかにし、それぞれの顧客の状態に応じた施策を検討・実施するのが、「リードナーチャリング(リード=見込み客、ナーチャリング=育成)」という考え方です。
リードナーチャリングは、「顧客」を意識した一連のプロセスの中でのタッチポイント(接点)を模索し、プロセス毎に異なる施策を用いることで、顧客をゴールへ導いていくマーケティング手法です。

対してUXは、「顧客」を意識しない「ユーザー」体験です。目指すのは「より優れたユーザー体験を実現すること」であり、ビジネスゴールへと導くためのマーケティングとは似て非なるものです。
ビジネスにUXを取り入れるには、サービスとして理想の体験を提供する「UX」と、ビジネスとして成果が必要な「マーケティング」の両者のバランスが重要になります。ユーザー体験とは何であるかを考える上で、マーケティングで創出したタッチポイントに対し、「顧客」ではなく「ユーザー」視点で体験を見直してみる、といったアプローチもあるでしょう。
共通するのは、ユーザーとのタッチポイントがよりよい体験・よりよい成果として現れるまで、仮説と推論の試行錯誤が必要になる点です。
知ったことをどう活かすか
ユーザーのライフスタイル、趣味、思考、行動などさまざまな情報を集め、まずは知ること。それをどう活かすか、それがサービスの未来を切り拓くことにつながります。